クロ * Full picture of the plan * Ⅳ



「…名前は、ない。年れいは5さい。」



「え、俺とおなじ…?」



「ちがう。あした、6さい。」



「誕生日が明日ってことか?なら、陽向の1つ年上だな。」



正直、俺には少女が何を言いたいのかさっぱりだったが、すーは少女の言葉を理解して俺たちに翻訳した。



「…あなたは、だれ?」



「ん?俺か??
俺は雪白 澄海。こいつらの兄貴分みてーなもんだ。好きに呼んでいいぞ」



少女に興味を持たれたのが嬉しかったのか、すーは少女の頭を笑いながら撫でた。



「…ねぇ、お家がないんだよね?」



そんな微笑ましそうな光景を少し離れたところから見ていると、隣にいたはずのひよが少女へと近づいていっていた。



(コクッ)



「じゃあ、帰るところもない?」



(……コクン)



「なら!私たちといっしょにくらそ!!」



「ぇ……?」



突然なひよの言葉に俺もすーも少女も驚いた。



何を言い出すかと思えば、いきなり一緒に暮らすなんて…



「うーん…じゃあまずは名前がなきゃだよね。」



真剣に悩み始めたところを見ると本気らしい。



…ひよは昔から本気になると意地でも意見を変えないから、俺とすーはすぐに諦めた。



「あっ!そうだ!!ひまりは?」



「えっ?」



「きーまりっ!!!!
今日からあなたの名前はひまりよ!」



「…ひまり??かんじは?」



「"向日葵(ヒマワリ)"ってかいて"ひまり"!!
私たちとそっくりでしょ?」



さっきまで戸惑っていた少女も、名前をつけられるのが嬉しいのか、初めの虚ろさがなくなってひよへと話しかけた。



「…向日葵??じゃあ"ひま"な!」



完璧に置いてけぼりにされた俺は、すーとひよの2人の間から顔を出し、ニコリと笑いかけた。



「ひま??」



「そっ!向日葵だとながいだろ??だからひま!

俺はひなってよんでな?」



「じゃあ私もひよって呼んでね!!
これからよろしく!」



「うんっ!よろしくねっ
ひなっひよっ!!」



この時、俺たちは初めて少女の、ひまの笑顔を見た。



…年相応の、名前にぴったりな明るい笑顔を。


< 178 / 386 >

この作品をシェア

pagetop