さよなら、愛しき人。【完】



話していると、内線が鳴った。


「はい。…えぇ、はい。お客様?…今日は商談も何も入ってないはずですが?」


早紀さんが電話をしている時、ちょうどルイが帰ってきた。


「ただいま、唯奈」


おでこに優しくキスをおとし、ニコッと笑う。


その仕草に、胸が高鳴った。


「社長、受付にお客様が来ているとのことですが、どうなさいますか?」


「お客?いいよ、通して」


「わかりました」


確か商談も何も入ってないっていってたよね?


どうしたんだろう?


ルイは私の手を引き、ソファに座った。


「唯奈、おいで」


自分の膝を叩いて、いかにも座れという合図。


お客様が来るっていうのに…。


ま、来るまで座っててあげよう。


私はいつものようにルイの膝に座った。


すると、満足そうに笑い、私の頭をなでる。


「なんか最近、素直だね」


「ち、違う!それに私は元々素直だもん!」





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