大切な君とI LOVE YOU
今日は唐澤先生のところに行かず、放課後、佑宇真と一緒に帰っていた。
せり姉はあの後、また地方の大学に戻り、来年には結婚するらしい。
オレは佑宇真がせり姉に告白する場面は見ていたが、その後のことはまったく知らない。
でも、せり姉が結婚するってことは、佑宇真はフラれたってことになるのだろうか?
「なぁ、寧々、今日は俺んちに寄っていかないか?」
「えっ!?」
佑宇真がそんなことを言うのは珍しい。
いつも、オレが『寄ってもいいか?』って、聞くから……。
でも、オレは佑宇真が誘ってくれたことが嬉しくて、つい、
「うん。寄って行く。」
と、答えていた。
この後、あんなことが起きるとは想像だにせずに……。

佑宇真の部屋で、いつものように音楽を聴きながら、たべっていた。
「寧々、あのさ、お前……。」
佑宇真が突然、何かを言いかけた。
「ん?何だよ、佑宇真。」
「ここ最近、放課後、俺と一緒に帰らなかっただろう?おばさんに聞いたら、夕御飯、食べて帰って来るって聞いた。一体、どこに行ってるんだ?」
(母さんのバカ!おしゃべり!まさか、佑宇真に先生のマンションに行ってるって、言うワケにはいかないしなぁ。どうする、オレ?)
とりあえず、佑宇真には誤魔化すしかない。
「友達だよ。友達の家に行って、晩飯までごちそうになってるんだよ。」
「ふうん。友達が唐澤先生の車に乗ってるのを見たって、言ってだぞ!お前、いつから、俺に嘘つくようになったんだよ!!」
佑宇真は見るからに、怒った顔をしていた。
「…ご…ゴメン。だって、言ったら、佑宇真、そうやって怒ると思ったから……。」
「怒って当たり前だろう?あれほど、唐澤先生と近づくな!って、言ってあったのに……。しかも、お前に嘘までつかれて、これが怒られずにいられるか!!」
佑宇真はめちゃくちゃ怒っていた。
(…ど…どうしよう?佑宇真、めちゃくちゃ怒ってる。)
「あいつとどこで何してるんだ?夕御飯、食べてるってことは、まさか、唐澤先生の所に行ってるのか?」
佑宇真にそう問い詰められ、オレは何も言えない。
そんなオレを見た佑宇真は、それが答えだと察したのだろう。
だが、次の瞬間、また責める言葉を投げかけると思っていたオレの肩に手を置き、佑宇真は顔を近づけて、乱暴なキスをした。
そして、そのまま、きつくオレを抱きしめると、さらに深いキスをしてきた。
オレは驚きすぎて、身動き一つできずに、佑宇真からキスをされていた。

(何だったんだろう、あれは……?)
昨日、佑宇真に突然、キスをされた。
あの直後、佑宇真の母さんが夕御飯の支度ができたと、下から呼んだので、オレと佑宇真の唇は離れた。
佑宇真もオレを抱きしめる腕を緩めて、離れると、後ろを向き、先に扉に向かい、少し開けると、
「…寧々、ごめん。」
そう呟いて、オレに謝った。
(謝るなら、何であんなこと……。)
嫉妬にしたにしろ、やりすぎだ。
だって、佑宇真はずっとせり姉が好きで、告白したのだって、オレは見ていた。
あの時の切なさと悲しさは、今もまだ忘れていない。
あの日、河原で大泣きしたのを覚えている。
確かに、先生の所に行っていたことを、佑宇真に秘密にしていたのは悪い。
佑宇真から責められても仕方ないことだ。
(でも、だからといって、あんなキスをして、抱きしめてくるなんて……。反則だよ。)
オレは、佑宇真の熱いキスときつく抱きしめてきた胸の中の感触を、今更ながらに思い出して、顔が熱くなるのを感じていた。
それと同時に鼓動が速くなり、ドキドキしてきた。
昨日はあまりのことに驚きすぎて、感情が追いついてこなかったのだ。
佑宇真はどういうつもりで、あんなことしたのか。
先生に対する嫉妬。
でも、佑宇真が好きなのはせり姉。
だけど、もしかして、オレに、幼なじみ以上の『好き』という感情を、少しは持ち始めてくれているということなのかな?
(…分からない……。)
でも、こればかりは佑宇真自身から聞かないことには。
だけど、今のオレにはそれを聞くことはできないでいた。

















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