笑う門には福来たる!!
藤十郎が言い終わると

土方が藤十郎を抱えた

沖田は、無理が出来ないので


「ゆっくり来い!!」

「はぁーい」



走る土方の背中を見送った



「それで、嫁に……」



沖田が納得した

誠が亡くなった時の土方は、憔悴しきり

仕事が手につかなかった


だから


生きて別れたかった



土方が、辛くないように






「誠十郎!!!」


「ひいっーーー」


店番の男が情けない声を上げる


「藤十郎、連れてけ!!」

「こっちだよ」


誠十郎の部屋へ向かっていた


部屋の廊下に、両親が立っていた


「土方君……見送ってくれ」

「よろしくお願いします」


二人が頭を下げた


部屋の中を見ると

布団の中で、浅い呼吸をしている

誠十郎の姿があった


かけより、上半身を抱き起こす


「馬鹿野郎!!
全然、諦められねぇーんだよ!!
どうにかしろ!!」

「うっる…さい」

「誠十郎!!!」

「夢の中でも……うる……さい」

「夢じゃねぇよ!!誠十郎!!」

「あははっ 本物みた……い……」


声を出して笑った誠十郎を見るのは

初めてだった


「誠十郎?」



「兄上?ねんね?」



沖田の到着を待たず、逝ってしまった




「誠十郎ーーー!!!!!」




まだ温もりのある体を必死に抱きしめ

名前を叫ぶ


「土方君、私からだと、渡して欲しいと言われたが、誠十郎から君にだ」


その着物を見て、到着したての沖田が
目を開いた


「綺麗な色ですね!コレ、絶対似合う!
早く着て見せてよ!!」


土方が着替え、笑ったまま

誠十郎に


「どうだ?似合うだろ?
……寸法なんて、いつとったんだ?
ピッタリだよ、ありがとうな」


涙を流した


「兄上のしるし、知ってる?」

土方の羽織の内側を指さす


「こっちが兄上で
 こっちがお客さんの名前」


着物と同じ色で名前を刺繍していた

言われても、よく見ないとわからない




右側に〝土方 歳三〟

左側に〝誠〟


誠十郎の葬儀には、誠十郎の作った着物を

着た



沖田の羽織


右側に〝沖田 総司〟

左側に〝誠十郎〟





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