強く儚く
やがて人通りも減り、真っ暗な闇に包まれた頃だった。

さすがに私自身怖くなった。
私を殺してくれる人が現れたなら、ぜひ殺してくださいというところだけど。

あいにくこの寒さだとそれは難しいみたい。

寒いと言っても少しひんやりするくらいだろうか。

何も分からないまま歩いて、ふと見上げればそこには桜がひらひらと咲いていた。

「桜……」

日本の象徴を思わせる桜。
私の家の近所に、こんなに綺麗で美しい桜があっただろうか。

ひらひらと舞い散る桜に見入っていると微かに砂を踏む、足音が聞こえた。

「……」

ゴクリと思わず生唾を飲み込む。
月明かりと共に闇から現れたのは、浅葱色の羽織を見にまとう、二人の若い青年だった。

刀を腰に差し、白いダンダラ模様が目立つ中…私は密かにここが江戸時代ということを確信してしまった。

(「この人たちは、見覚えがある。歴史で習った……新選組だ」)

新選組は江戸時代、幕末に生きた京の治安維持を守るために結成された組織。

彼らがいるということは間違いなくーここは過去の世界。

ここでなら、きっと。

私を容赦なく殺すはず。

私はじっ、と見つかるのを待つがそう数分も見つかるのはかからなかった。
< 2 / 12 >

この作品をシェア

pagetop