落ちてきた天使
「バイト休んで大丈夫だったのか?」



皐月は買ってきた缶ビールをプシュッと開けると、喉に流し込みながら思い出したように言った。



「今日お店休みなの」

「休み?定休日じゃないだろ?」

「花火大会の日は毎年特別休業するんだって。洋平が言うには、花火に特別な思い出があるみたい。二人で花火見ながらゆっくりしてるんじゃないかなって」



今日は日曜日。
いつもなら普通に営業しているはずだ。


店は会場から駅に向かう途中にある。
お酒を飲んでおつまみを食べながら花火を満喫した後、締めにラーメンを食べに来るお客さんは多いだろうなって思ってたから、バイトを休みたいだなんて少し言い辛かった。


だけど、女将さんから花火大会の日は特別休業だって聞いて内心ホッとした私。
それに気付いた女将さんにクスッと笑われてしまった。



「へぇ、そういうのいいな」

「素敵だよね。特別な日をいつまでも大事にするって。凄く憧れる」



二人は本当に仲が良い。
喧嘩はする。愚痴を聞いた事だってある。


でも、その喧嘩や愚痴にも愛を感じた。
お互いを想い敬う姿は、愛を諦めてきた私の胸にじんっと染み渡ってくるんだ。



私が誰かと一生涯を共にするなんて夢のまた夢。
願ってはいけないことだってあれだけ思ってたのに。


今は、皐月との未来を想像してしまう。


皐月と過ごす未来はどんなだろう。
たくさん喧嘩して、たくさん仲直りして。
愛を伝えて、愛を貰う。


何十年経っても、天下一の二人みたいに仲良しでいたい。


そんな風に思うようになっていた。





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