落ちてきた天使
あんなのが頭の上から落ちてきたらひとたまりもない。

想像するだけでゾッとする。
たまたま皐月が来てくれたけど、もし助けに来なかったら……

私はあの瓦礫の下敷きになってたかもしれないんだ。



「彩が火事現場に走ってく姿を発見した時も心臓止まりそうになったけど」

「ごめん……」

「何でこんなところに来たんだよ。待ってろって言ったろ?」

「だって……もう待ってるだけじゃ嫌だったから。守られてばっかじゃなくて守りたい。待ってるだけじゃなくて迎えに行きたいって……思って…」



でも、私どうにかしてた。

皐月に叱られて当然だ。
私が行ったところでお荷物だった。皐月の負担が増えて、もっと危ない目に合わすだけだったかもしれない。

火事現場に入ったって、会えるとは限らない。
煙を吸って動けなくなるとか、何かが倒れて道を塞がれるとか。そういう危険な状況になって、必死に消火活動、救出活動してる人達にも迷惑掛けてたかもしれないのに。

私、そんなことも考えられないぐらい自分ばっかになってた。

不安や恐怖が自分が受け止められるキャパを超えて壊れ、思考が麻痺し気が大きくなってたんだ。


皐月に叱られてようやく自分の浅はかな行動に気付いた。

今更手足が震えてきて、自分を抱き締めるように腕をぎゅっと握った時。


「はああぁぁ〜…」と、皐月がこれまでにないぐらい大きなため息を吐いて、その場に項垂れて座った。



「そんなこと言われたら怒るに怒れねぇじゃんか」

「え?」

「守りたいとか迎えに行きたいとか……」



あ……さっき私が言ったことだ。

浅はかな行動を取った。気が大きくなってた。
でも、そう思ったのは紛れも無い事実で、嘘でも冗談でもない。

私だって大切な人を守れるように強くなって、その人の一番安心する場所になりたいと心から思う。

そう思えるのは、誰かに大切にされてると実感出来るから。

溢れるぐらいの愛を、皐月が注いでくれるからだ。



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