だって、キミが好きだから。


大丈夫。


まだ……大丈夫。


あたしは大丈夫。



自分にそう暗示をかけて、今日も病院に向かうバスに乗る。



あれから数日が経った。



定期受診の日から、あたしは目に見えない恐怖をすぐ隣に感じるようになっていた。



今日は土曜日。



バスに揺られながら、窓の外に目を向ける。



見慣れたこの風景も、忘れちゃう日が来るのかな。


何もかもを忘れたあとって、きっと怖いよね。


そしたらあたしは、どうなっちゃうんだろう。



もう今みたいな生活は出来ない?


お父さんやお母さん、お姉ちゃんのことも忘れちゃって。


友達や琉衣との思い出も全部失くなっちゃうんだ。


ひとりぼっちになっちゃう。


何も……何も残らない。


空っぽのあたし。



いくら考えてみても、答えなんて出ない。



真っ暗な闇が広がる一方。


光なんて見えない。



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