生徒だけど寮母やります!2


この人が.....


景の行方不明の姉..........



胸の中を何かがスッと掠め、そしてそのまま消えてしまうような喪失感



彼女の笑顔は景のそれと重なるのに

そんな事を思った自分を嘲るかのように、全くもって景とは違った



自分の中にいる大切な彼女の笑顔が遠くて遠くて届かないことを、一体何回思い知ればこんな気持ちが落ち着くのか


心の痛みだけは嫌にはっきりとしている



「ほら、ここよ」


『ハナ』に連れられてやってきた場所は、あの寮の様にいくつもの部屋が並ぶ廊下


爽馬はすでに自分のネームプレートが戸に掛けられている部屋に目を留めた



「ソウマって爽やかな馬って書くのね。いい名前」


自分の名前を褒められ、爽馬は顔を上げる


「.....ハナさんは、どういう字を書くんですか」


「え?」


ハナは、無口な爽馬からいきなり尋ねられ、少し素っ頓狂な声を出した


「.....ハナは.....カタカナだよ」


何が面白いのかよく分からないが、彼女はエヘと笑う


「そうですか」


「うん.....爽馬君に、そんな事聞かれるとは思わなかったわ。あなたのお姉さんやお兄さんたちは、悪気はないんだろうけど冷淡な性格で、他人なんてどうでも良いって感じだもの」



爽馬は確かにそうだなと一度頷く


大人数の兄弟姉妹そろって性格が冷たいのは、全ては親のせいというかなんというか


まるでロボットのようにならざるを得ない、もはや家庭ですらない『家庭環境』での父親の教育が皮肉にも上手くいっている証だ


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