生徒だけど寮母やります!2

思い切りぶつけます!






市河神社の夏祭りは、今年も子供からお年寄りまで大勢の人で賑わっていた


鬱陶しさと胸騒ぎを覚える熱気に包まれた人混みに足を踏み入れると、たちまち活気ある騒音に飲み込まれる


「うわぁ〜っ、僕お祭りなんて小さい頃以来だなぁっ」


そう言って自分の腕に抱きついてくる満宵が可愛くて、景は顔を覗き込むようにして笑った


「いっぱい食べようー!」


「うんっ」


「それにしても凄い人の数だね、寮母さん。女の子なんだから、痴漢やスリなんかには気をつけないとだよ」


左隣では満宵がパァっと笑顔を咲かせているかと思いきや、右隣では千加が顔をしかめながら忠告してくれる


頭ごなしに彼が人混みが嫌いなタイプだと決めつけるのは偏見だろうが、まず間違ってはいないだろう


「ありがとう千加君。今年は絶対みんなから離れないようにするし、気をつけるね」

景が両手で拳を作りながら頷くと、千加の奥隣を歩いていた千冬がヌッと顔を出して言った


「そもそも、もう既にかなりの注目を集めていて安全とは言い難いですよね」


一列に並んだ4人が同時にパッと後ろを振り返ると

弥隼、市河、ライ

さらにその奥に

結斗、ルーク、咲夜

が景たちに続くように談笑しながら横に並んで歩いている



去年は一年生がいなかったけれど、それでも大いに目立ったのだから今年はなおさら

自分の隣と後ろを歩く彼らが、注目を集めないわけがないと

景は改めて肩身がせまいような気分になった


「う.....うん。いつもの事ながら、かなり見られてるね.....」


この気持ちは何度味わっても慣れない


それぞれが強烈な個性を放つ男子寮Bは一人一人が目立ち、さらにその中を歩くパッとしない普通の女子はそれに負けないくらいに目立つのだから


「そりゃそうだよっ。あそこに歩いてるの、ヴァンパイアとドラゴンと一反木綿だよ?」


満宵が目をしかめて一番後ろを歩く3人を見ると、目があった結斗が手を振り返してくれる


「平和だよね。ヴァンパイアとドラゴンと一反木綿が仲良く夏祭りしてるんだから」


景は隣で肩をすくめる千加の言葉に苦笑いしながら


「痴漢やスリの心配はないかなぁ」


と呟きながら手を振り返した

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