生徒だけど寮母やります!2



しかし

思わぬ出来事が起こったのは



その後すぐのことだった



午後5時半ごろ


静寂が支配するリビングのドア越しに聞こえる、玄関がガチャリと開く音


キッチンにて夕飯の支度をしようとしていた伊吹家の娘が気付き、スリッパを鳴らしてドアへと向かう

「ん、今玄関から音したわよね?」


.....父親が帰って来たか


私はその様子をソファに座り、目線で追いかけていた


「だれ?お父さんもう帰っ.....えっ?」


しかしリビングのドアを開け玄関を見た娘の反応は、ただ父親が帰って来ただけではないように思われた


彼女は目を見開きその場で足を止める


「どうしたの!?」


ただことではない、驚いた表情

帰って来た父親に何かあったのだろうか?


そう思ったのも束の間

そもそも玄関にいる人物が父親ではないことに気がつく


「.....こんばんは.....お邪魔します.....」

「こんばんは」


ドアの向こうから聞こえたのは若い男女の声だろうか


この家族のものではないそれに、私は一瞬思考を停止させた


_____誰だ?


しかしその答えはすぐに、娘によって分かることとなった



「い、いらっしゃい!結斗の.....お友達かな?こんなに大勢.....」


結斗の.....友達?


___考えろ


伊吹家息子の友達が、本人無しに伊吹家に来るわけがない


ということは、今日の午前中に帰ったばかりの伊吹結斗もここに来ているということか


そもそも今この娘は「大勢の友達」と言った


その大勢の友達が私立魔妖学校の生徒だった場合、その中にシベリアンハスキー姿の景を見たことがある人がいるかもしれない


そうなれば、バレてしまう


_______全て




「.....姉さん」


少年の声が、娘をそう呼ぶのが聞こえたと同時



ガタガタガタッッ!!!



私は咄嗟に


人の姿に戻っていた




______逃げなくちゃ


______結果的にバレても、バレてから行動したんじゃ遅い!


物音で気がついた娘が、こちらを見て悲鳴をあげる



「.....え..........だ.....誰!!」




突如家に現れた、どのように入ったのかも分からない女を目の当たりにし、急激に青ざめて行く娘の顔


このとき私は、とある覚悟を決めた
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