エリート医師に結婚しろと迫られてます


「へっ?あ、あの…何かの間違いでしょ、それ」

前に会ってる?

人違いじゃなくて?


冗談だと思って、愛想笑いしてみた。
けど、森谷さんの顔は真剣そのもの。


冗談じゃないんだと思うまで、彼の顔がゆるんで笑顔になるまでじっと見つめてたけど、彼の表情は変わることがなかった。


「本当に覚えてない?」

あなたを、小さくしたような可愛い少年はいなかったと思う。

通りすがりに挨拶したっていうのまで入れれば、別だけど。



「えっと…」

いろいろ思い出してみても、森谷さんとかすりもしない。


「ここには、よく浅倉さんと、3人で遊びに来たんだ」

彼は、海を見つめて言う。
きらきらと鈍く光る海。

海に遊びに来て兄たちと会ったの?


「3人?」


「3人ていうのは涼平さんだよ」


「ちょっと待って、涼平さんのこと、知ってるの?」



「僕は…君のお兄さんと同じ中学だったんだ。それは、知ってる?」

兄は、電車で一時間半かけて東京の進学校に通っていた。

時どき、その友達も来てたけど、その中に森谷さんがたのだろうか?

そんなこと全然覚えていない。

記憶にないから、来てないだろう。

彼がいたら、すぐにわかっただろうから。



「いいえ。知りませんでした。ごめんなさい」

私が、いかに兄の友達に興味を示さなかったのか、よく分かる。


「いいよ。そんなこと。それより、僕はその頃、家の事情もあって、よく君の家に遊びに来てた」


遊びに?何ですって?
うううっ…敗北決定しそうだ。


「もちろん、私もいたのよね。留守じゃなくって」


「もちろん、いたよ。
真理絵ちゃんのことも前から知ってた。涼平さんと真理絵ちゃん…あの2人とは、今でも時どき連絡をするよ。


「何ですって!!そんな…」

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