絶望エモーション
精一杯、顔をそむけた私に葦原くんが厳然と言い放った。


「もう遅いんだよ」


欲と興奮に艶っぽく上気し、薄く微笑んだ彼は悪魔的に美しかった。
薄い色の瞳がきらめく。


「あなたはもう俺の罠にかかったんだ。おとなしく捕食されるのが運命」


いや、いやだ。

こんな男に心を踏みつけられながら犯されるのは嫌だ。

私は首を左右に振った。
行為の拒否のため。心を凌辱される苦痛のため。


「そんな顔が見たかったんだ」


葦原くんは満足そうに言って、私を征服する工程に戻って行った。





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