絶望エモーション
ちなみに佐賀さんに付き合うという体で、私は人生初のお呼ばれドレスを買った。
着飾ることに興味が薄い私は、とにかく目立たず、足が隠れるデザインを選んだ。黒は確かに地味かもしれないけれど、年齢もあるし、あまり浮かれた格好をしても仕方ない。

実は結婚式に出席すること自体、初めての経験。作法が心配でネットで予習していたりする。

なお、この前設けられてしまった制約のため、佐賀さんと買い物に行くのにも、葦原くんに許可をとった私は律儀だと思う。

葦原くんの答えは『佐賀はバカなんで、あなたの好みじゃなさそうですし、いいですよ』というにべもないものだったけれど。


「鎌田部長に決済をもらいにきたのに、佐賀と遊んでるってどういうことですか」


女子三人の前に現れたのは与野と葦原くんだ。

ふたりは合同で他社のプロジェクトに関わっている。
最近はとても忙しい様子だ。


「あ、決済はやるやる」


「花嫁浮かれすぎッスよ」


与野が突っ込み、未來さんがへらっと笑った。
彼女の幸福に胸が痛むのは相変わらず。ただ以前より考えている時間は減った気がする。

私の考える隙を奪っているのは、近くで意味ありげな視線を送ってくる葦原くん。
その点は極々わずかに感謝。
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