HE IS A PET.


『断る理由がない』という消極的な理由で お茶に付き合うことにした私に、守田さんは積極的に話しかけてくれた。

「実は昼がまだでさ。食事してもいいかな。倉橋さんは、お昼食べた?」

 魔女のマンションを出て、どれだけふらついていたんだろう。気づけばもう午後二時だ。

「はい、軽く」

 嘘をつく。

「じゃあ、まだ余力ある? 何でも頼んでよ。あ、これとか旨そう」

 メニューを指差して、おすすめしてくる守田さんの、にこやかな笑顔だけで、何だか満腹。

 守田さんの忙しく充実した日々の話を聞きながら、普通に受け答えできる自分に、内心安堵した。

 良かった。意外と普通だ、私。ちゃんと笑えてる。
 そう思ったタイミングで、守田さんが尋ねた。

「彼と上手くいってないの?」

「え?」

 怜のこと、守田さんに話したっけ?

 前に酔っ払って喋りはしたけれど、本物の犬の話だと誤解してくれた……はず。

「バツイチのイケメンくん。一緒に住んでるんでしょ?」

 何だ、シュウのことか。
 厳密にはバツイチじゃないし、ダメンズだけど。

「あ、」

 そういや忘れてた。


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