あなたの大切なひと
「美海、どうしてる?元気か?」

懐かしい声が電話越に聞こえた。

「元気よ。要は?どう?新しい土地にはもう慣れた?」

「うん。実は、今日本社に出張してきてるんだ。良かったら、飯でもどう?」

「今日?」
金曜日だけど、特に予定もなかった。
残業もするような、立て込んでいるものもない。
別れ話は電話だったし、もう要に恨みつらみはなかったし、純粋に会って話したくなった。
「うん。いいよ」

「…ほんとか?じゃあ、7時にドルフィンでまってる」

「わかったわ」

ドルフィンは、付きあっていた頃によく待ち合わせしたカフェだ。

お店には私のほうが早く着いた。
カプチーノを頼むとほどなくして運ばれてきた。
私は自然に笑顔になる。

ここのカプチーノは、白いイルカを浮かべてくれるのだ。
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