プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
ワンストライク、ツーボール、一球も振らずに見送った後、四球目のボールに敦士はしっかりタイミングを合わせてバットを振った。


勝負している張本人の二人は元より、他の一年も、一輝くんも立ち上がってキャッチャーマスクをとって、打球の行方を見守る。

大注目の打球は、一塁線上に伸びていき、外野のポールを越え、フェアかアンフェアかギリギリの位置に落ちた。


飛距離的には確実にホームランコース、だけどフィールド内に入ってなければ、ホームランどころかストライクカウントひとつプレゼント。

今のはファールかホームランか、ビミョーなとこ。



「ファ、ファール!」


小さくガッツポーズした敦士に、一塁線近くにいた一年生より非情にもファールの宣告がなされる。

当然敦士はその一年をにらみつけるわけで。


「おいどこに目つけてんだよ、今のフェアだろ。
ホームランだよ」

「あきらめろ、テメーのチームメイトがファールだっつってんだ。これでツーストライク、追い込まれたぞ」

「は?つか、さっきから何で何気にタメ口なんだよ。
にっしーの弟ってことは、俺より年下じゃねぇの?」


敦士の文句は華麗にスルーすると、すぐにまた投球姿勢に入る裕貴。

クールぶってはいるけど、相当カッときてたりして。
ちょっと左にずれてればホームランだったもん。
しかも、自分が見下してた相手に初見で。


......あ。
一塁近くのこの位置からだと、ちょうど裕貴の手の握りが見えちゃった。

マウンドの裕貴のボールの握りかたで、次に投げる球種が分かると、やっぱりあたしの推測通りに裕貴が内心イライラしてることを確信する。

< 121 / 623 >

この作品をシェア

pagetop