プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
こんなに本気で走ったの、中学の部活の時以来ってぐらいの全速力で体育教官室まで走り、そのままの勢いでバアン!と大きな音を立ててドアを開けた。

中に入ると、運動部の色々なものがゴチャゴチャと並べてある棚のところで、何かを手に持っている一輝くんと目が合って、すぐにそれを取り上げる。


「何探してるの?
あたしがやるから座ってて!ていうか、病院行こう!」

「病院......?
俺たち戦争中じゃなかったんですか?」


いきなり登場したあたしに戸惑っている一輝くんの手をさあはやく!と引いていると、一輝くんから取り上げた箱の中身が床に散らばった。

ゴロゴロと何か丸いものが出てきたけど、そんなものを気に留めてる場合じゃない。


「そんなこと言ってる場合じゃない!」


戦争中なんて言ってる場合でもないし、こんな大変な時に子どもっぽいことしてる場合じゃない。


「ずっと夢見てた甲子園の目前で試合に出られないかもしれないってなったら、投げやりになる気持ちも分かるよ。

だけど、一輝くんにはまだ来年もあるし、何も今年が最後ってわけじゃない。今ここで自暴自棄になって、この先野球がやれなくなってもいいの?

そんなに病院に行くのが不安なら、あたしもついてくから。大丈夫、何があってもあたしがついてる」


一輝くんに何とか自分を取り戻してほしくて、どうにか正しい方法を選んでほしくて、ただその一心で必死に説得する。

無意識のうちに、彼の右手を両手で包み込むながら。


「......?試合に出られないって?
俺はみのる先輩に頼まれて、投球練習用の新しいボール取りにきただけです」


しかし、一輝くんの口から出たのは拒絶でも自暴自棄でもなく、見当違いのものだった。

......え。


言い出しにくそうに、困ったように眉を下げる一輝くんを見て、ようやく気づいた。

敦士にかつがれた、と。
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