片腕のピアニスト


ただただ無難に、そつなくやり過ごせ。そういうのは得意だろ。

大人の扱いも慣れている。


ひとりぼっちになろう。
その方が楽だから。




ぎいいいいぃぃぃ。



大きな騒音をたてて門が開いた。

目の前には巨大な噴水。
その両サイドに直径5メートルの通路がある。



通路の向こう側にはバラ園があり、全てを超えたそのまた向こう側にはこれまた巨大な宮殿のような校舎がある。


……俺の家よりちっさいな。

まあ当たり前だろう。


シゲがいそいそと扉を開け、俺を迎え入れる。
そういや最近雪を題材にした大ヒット映画があったような…

扉開けてほしい子の話だっけ。



くだらない事を思い出す。

あんなに簡単に心の扉は開けられないだろう。
特に、俺のココロは。


俺の周りにはネズミしかいない。

チューチューチューチュー這いずり回って俺を取り囲む。


必要な部分だけ齧り取って、いらない部分は「ああ、余っちゃったから誰かどうぞ」だ。



そしてコレが、余った抜け殻。



いつしか、
純粋な頃の俺を思い出せなくなっていた


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