片腕のピアニスト



でも、ピアノだけは違った。



ピアノを弾いていると、心が安らいでいく。


自分の奏でる一つ一つの音が、メロディとなって連なっていくのが目に見えるんだ。



ピアノをしている時だけは本当に幸せで、幸せで。

嫌なこと全てを忘れることができた。



でも、俺がピアノにのめり込み始めると、親は反対した。



ピアノを始めさせたのはアイツらなのに。



理由は多分こうだ。

ピアノだけにのめり込み始めた俺は、他の何もしなくなった。


ピアノを出来ることを望んでいたアイツらは初めのうちは大層喜んだ。
でも、俺が勉強も他の何もかもを疎かにし始めたから。

ピアノだけに打ち込み始めたから。



それが面白くなかったんだとおもう。

ほんとに薄情だ。


その世界に俺を連れ込んだのはオマエらだろ。




そのうち、ピアノは知らないうちに捨てられた。





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