かわいい金魚
萩と、同居人の青年に連れられて、タカヤは去っていった。

何度も何度も振り返りながら。

不安そうな、それでも何かをあきらめたような、静かな目をしていた。


売られていく子牛みたいだ。


なんとなく、そんな歌を思い出して、沼田は苦笑した。


……ひどく、疲れていた。




思い出した歌を、小さく口笛でたどりながら、沼田は自分の部屋に戻った。


別に、元の生活に戻っただけじゃねぇか。


ひとりきりの部屋は、ずいぶんと広く感じられた。

物理的にも、そこそこ広い部屋だったが、180cmをゆうに超える男がひとりいるといないでは、ずいぶんと感じが違うものだ、と思う。


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