親指姫な彼女と普通の俺

日常にはお姫様がいるようです

長いようで短いような
退屈なようで面白いような

授業の終了10分前になったことを確認し
ふーっと息を吐いた

(さぁ あともう少しだなぁ…ん?)

海斗に目をやると、何やらぶつぶつと呟いている

「ん… ここはこうするか いやでもこれだとな…」

おそらく服のことだろう
思わず笑みがこぼれた

(口が悪いんだか 優しいんだか…)

ふと自分も何かしようと考える
何がいいだろうか


渡さないといけないと思わないと
そんなことはしない

例えばホワイトデーなんかは貰えばお返しをしなければならないとゆう使命感で
今まで返していた

自分からすすんで贈り物をするなんて
どうしてこんなことを思うのだろうか

それはあの喜んだ姫の笑顔が見たいからかもしれない

(…俺、海斗に対抗してるのか?)

そう思ってるうちにチャイムが鳴り響いた



いつもと変わらぬ放課後
何か違うとすれば、あの姫の話が加わったくらいだ

「海斗~ ずっとデザインしてたの?」

「おう おかげで脳細胞1万くらい死んだわ」

ぐったりとした様子でペットボトルのジュースを飲み干した

「ちくしょう 几帳面な自分を呪うぜ…ったく」

(ほんと真面目だよなぁー)

腕時計を確認して お、と短く言う

「んじゃバイトいってくら」 

「ほいほい よく働くの~」

「お前も早く次の探せよ? 俺を見習って働きなさい」

「わかってるよ~ そろそろ探さないとな」

二人は階段を降りてゆく
急に海斗の表情が渋くなった

「しかし シュシュがいるからな あんま一人ってのも 不用心だ」

「妖精ハンターとかいるかもしれないしな うん」

そう頷くと
あー…と唸るような声を出して

「ソ ソウダネ… まぁいるかもしれんしな」

「あれ?海斗が空想って突っ込まないぞ」

「まぁな 種からあんなもんが出てきたわけだし 空想じゃなくなったわけだろうが」

胸を張ってなぜか堂々と歩き出した太陽に
突っ込めずモヤモヤが募った

「じゃ ここでな」

「おー 今日バイクだったね」

「じゃねーと間に合わんからな シュシュによろしくな」

「はーい」
(なんだかんだで 溶け込んでるね海斗…)

そんなことを思いながら駐車場へ向かう親友に手をふって別れた
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