生徒会長が私を好きな理由
誰かが笑った顔を見てつい見とれてしまったことは初めて…それに笑顔を見れたことに嬉しいと思った事も初体験だよ。





「着きましたよ」


私の乗る車が家のアパートの前に着き、私は足元におろしていたカバンを手に持った。




「送ってくれてありがとう!…ローズさんも…ありがとうございました!」


一柳くんとローズさんにペコペコと頭を下げ、私は車から降りて一柳くんの乗っている方へ回ると窓がゆっくりと開いた。





「お前の母親にはこちらから改めて礼をすると伝えてくれ」

「いいよお礼なんて」

「いいから伝えておけ。あと明日の放課後も生徒会があるから空けておけよ」

「うん、わかった。じゃ…」



ブォーン………




「じゃあね」って言おうとしたのに…行っちゃった。

少ししんみしながら、一柳くんの車が見えなくなるまでその場で立ち止まっていると…





「見ーちゃった♪」

「見ーちゃった!」

「ぎゃー!!!」


アパートの影から泉と由愛が登場!私は驚いて大声を上げる。




「な、何やってんの?」

「あんたを待ってたに決まってるでしょー」

「さっきは逃げるように帰っちゃってさ~私達になんか隠し事してるんじゃないかなと思って」


鋭い…さすが親友。




「さぁ話しなさい…今の車に一柳くん乗ってなかった?」

「どういう事なのー?」

「…」


2人に顔をぐっと近づけられた私は、観念したようにため息をついた後口を開いた。







「えー嘘ぉ!そんな事があったの?」


泉と由愛を家に招き、私の部屋で一柳くんの事や生徒会に入った経緯を2人に全て話した。




「それってチャンスじゃない?」


由愛がお菓子を頬張りながら目をキラキラさせて言う。




「チャンスって?」

「恋のチャンスよ!もしかしたら一柳くんと恋があるかもしれないってこと!」

「え…」


一気に顔が赤くなる私を見て泉と由愛が私に近づいて来る。





「もしかして…もう一柳くんの事好きなの?」

「ねえどーなの?そーなの?」


若干怖い顔の2人を前にして私は素直な気持ちを打ち明けた。




「…わ、わかんない。ただかっこいいとは思うし…一緒にいてドキドキしたりはするけど…まだ恋とかっていうのは…」


自覚ないな。一柳くんとちゃんと話したのは昨日が初めてだし、逆にこんなに早い段階で人って誰かに好意を持つものなのかな…

それすらわかんないよ。





「亜香莉ってかわい~~」


ケラケラとからかうように笑いながら、私に抱きついてくる泉と由愛。



どうせ恋愛初心者ですから、笑われても何か言われても言い返す言葉もないっす。

どうぞ思う存分笑って下さい…




「まあ、焦らなくてもいいんじゃない?ゆっくり時間をかけていけばいいよ」

「そうだよ。私達も協力するから何でも相談してよね」


優しく微笑んでくれた2人に、私は膝を抱えて照れくさそうにしながらニコッと微笑んだ。



これから一柳くんの関係はどうなっていくんだろう…生徒会の仕事はきちんとこなせるかな。

不安はもちろんあるけれど、私の胸はとてもワクワクしていた。
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