アイドルだけど、キミが好き。
1st.album

1song

「今日の収録は以上です!お疲れ様でしたー!」


「おつかれっす!」


「ありがとございましたー!」


全員がそれぞれ周りに声をかけると、ガヤガヤと人が動き出す。


「いやぁ〜今日も良かったよー!」


「ありがとうございます」


プロデューサーのお褒めの言葉にキラッとアイドルスマイルをお見舞いする。


それ、毎回言ってて飽きねぇのかな。


俺はそろそろ飽きてきたんだけど。


「アオ! 何してんの? 楽屋戻るぞ!」


「へーい」


ありゃー。しっかり者のにーさんがイライラしてる。収録伸びたし帰りが遅くなるのはしゃーねーじゃん。このせっかちめ。


「もーアオおっそい! 子どもじゃないんだからさー」


えー。それメグが言う? 1番子どもみたいなのに? 後ろからグイグイ押してくれっけどさ、あんまスピードあげれてないからな?笑


「また考え事? 家帰ってからにしなよ。まだ仕事中だからね?」


また俺見て笑ってるよコイツ。


「別に何も考えてねーし」


「あ、そ」


まーだ笑ってるよ。ほんっとによく笑うなー。


「あ、今まだ笑ってるって思ったでしょ」


顔に出てるよ、なんて言いながらケラケラ笑いやがって……


「もー心ん中読むなよ……その笑い止めてやる! おりゃ!」


こうなりゃ必殺こちょ攻撃! コイツの弱点なんか全部知ってんだからな!


「ちょっ! アオ! 止めるから! 脇腹はヤだって!」


いっつもすました顔しやがって。その白い顔真っ赤にしてやる!

「はいストーップ! ドアの前で何してんの? イチャつくのは楽屋でやろうぜ? 」


「リュウさん! 助かったー!」


「リュウなんで止めんだよ〜」


いいとこだったのに。


「今日動けるマネージャーは山さんだけなんだからさ、早く着替えてあげようぜ? ほら」


リュウがドアを開けると、中ですんごい睨むシュンと目があった。


やべぇ。にーさん激おこだわ。
つーか着替えんの早すぎて怖いわ。


「じゃれてないで早く帰りましょ? 明日も早いんですから」


ね? ってトモが言ってくんなきゃ、にーさんから目が反らせないほどだった。


俺もリクもすげぇ速さで着替えていく。


あ、Tシャツ前後ろ逆んなった。まーいっか。リクも靴下右左逆だし。


「準備出来た? 車用意してあるから乗って」


さっすが山さん。用意周到。山さんの一言でシュンもおとなしくなったし。ほんと仕事できる男だわ。


「はい、それじゃ出ますね」


車がガレージから出て行く。窓にかかるカーテンをチラッと覗くと、すっかり街は夜だった。
仕事前はすげぇ明るかったのにな……
今日も長かった仕事。これが俺らの毎日。


「アオ着いたよ。明日も7時に迎えにいくから」


「はえーよ……山さん電話して。起きれねぇ」


「仕方ないな。電話するから。今日はもう寝ろ」


「へーい」


去ってく車を見送ってエレベーターに乗り込む。
部屋に着いて靴脱いで、簡単にシャワーしたらそのままベッドにダイブ。
今日もお疲れ様、俺。


起きて


仕事して


寝る。


対して他の人と変わんない生活。


なのに


すごいねって


キラキラしてるねって


そんな風に言わないで欲しい。


だって俺がキラキラしてるわけじゃねーもん。


でも、俺自身が、俺らグループがキラキラすることをみんなは望んでる。


現実と理想のギャップ。


そんな職業なんだよな……アイドルって。





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