さよならリミットブルー

思い返してみれば、学校で碧人くんを追いかけて辿り着いた場所は空がよく見える屋上だった。

なんでいつも屋上に居るのか深く考えたことはなかったけれど、今ようやくわかった気がする。


空を見るために1番近い屋上に行っていたんだ。


……なんだ、全部忘れてたわけじゃないよ。

たとえ過去の記憶は無くたって、大切なものは簡単に忘れられない。

思い入れがあるピアスも、大好きだった空も、碧人くんはちゃんと憶えてる。


「ねぇ、碧人くん。写真撮ろうよ」


鞄に入れていたスマホ取り出して、唐突に碧人くんに突き出した。


「な、なんだよ急にっ……」


さっきまでふわふわと目線を揺らしていた碧人くんの瞳が、わたしを映した途端、元に戻っていた。

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