さよならリミットブルー

体育館を出て中庭に向かっても、碧人くんの姿はどこにも見当たらなかった。

溢れかえった中庭でたった1人を見つけるのは難しいに決まっている。

碧人くんは無駄に歩くの速いし、いくら身長が高くてもたぶん無理だよ。


碧人くん探しは諦めて、桃花と2人でお昼を過ごした方が早いかもしれない。

うん、そうしよう。


そう思い桃花に声を掛けようと振り向いた瞬間、


「……ひゃあっ!?」


突然ヒヤリと冷たい感触が頬にさわった。


「こんなところでなにしてんだ?」


バッと顔を上げた先には、


「あっ、碧人くん!」


平然な顔をした碧人くんが立っていた。


「日野くんどこ行ってたのー?探したんだよ。主に芽衣子が」

「あー、ちょっと飲み物買いにな」


飲み、物……。

わたしの頬に触れていた物体をよく見ると、ただの冷えた缶ジュースだった。

しかも、わたしがお昼によく飲んでいるグレープフルーツジュース。

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