choice 01

敷地の回りは水面で囲まれていて、360度水平線だ。

障害物で太陽が隠れることはよくあるがそうではない。

ここは明らかに異質だ。

葵は歩に聞いた。
「尋ねたい事があります」

「なんだい?」

「最初に起きていたのは誰ですか?」

「九条だ…それから俺を九条が起こして、有紀、美夢ちゃんに…葵君と順平君その後は殆ど変わらないなあ」

「そうですか…」

考え込んでいる葵に歩は言った。
「なぁ、葵君…これって主催者のサプライズって、事は…、ないよなぁ?」

葵はあっさり否定した。
「それはないでしょう…。他にも不可解な事があります…これを見て下さい」

そう言うと葵は自分のスマホを歩見せて言った。
「時刻は午後1時40分を過ぎたところです」

葵は時計台の方を指差し、言った。
「時計台の下に僕らの荷物が置いてあります」

確かに葵の言うように、時計台の下には自分たちの荷物が確認できる。

葵は更に続けた。
「僕たちがシアタールームに入ったのが午後1時過…気を失ったのか1時10分過ぎ…、まだ30分程しか経っていません…歩さん、あなたも気付いているのでしょう?」

葵は歩の微かな望みを絶ちきるように言った。
「仮に一番最初に起きていたと言う九条さんが、主催者とグルだったとしても、一人で僕たちを運び出し、御丁寧に荷物まで運び出す何て事は…たった20~30分では不可能です」

歩は項垂れた様子で言った。
「やっぱりそうだよねぇ…どう考えても普通じゃないよね」

葵は更に追い討ちをかける。
「もう僕らの乗っていた船も見当たりませんからね」

歩は言った。
「それは俺も気付いていたよ…九条に起こされた時には既に船はなかったよ」

葵は歩に言った。
「とにかく一度皆の所へ戻りましょう」

「そうだね…時間はたくさん有りそうだし、『島』の探索はそれからでも遅くないしね」

「島と呼ぶには…人工的過ぎますが…、辺りは水面なので島でいいでしょう…」

葵と歩は一度皆が集まっている時計台に戻る事にした。

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