初恋は最後の恋
昼休み。私と七海は隣のクラスの廊下にいた。もう一人の転校生を知っている御堂さんも誘おうと思ったが、彼女は転校生目当てに他のクラスに来るようなタイプには見えないのでやめておいた。でもその転校生が私の知っている「彼」なら、私は覚えているはずだ。

同じ幼稚園の別の組で、話したことは一度だけ。彼が引越しする前日、私たちは初めて話した。生意気で、偉そうで、でもなぜだかとても気が合って、私は彼を好きになった。娘が父親に「大きくなったらパパのお嫁さんになる!」みたいな気持ちだったのかもしれない。でも生憎私には父親なんていないし、この気持ちは今でも変わっていない。

転校生は彼かもしれないという思いとは裏腹に、ただ偶然同じ苗字かもしれない。でも、確かめたい。顔を見れば分かるはずだ。

私はさり気なく教室を覗いてみた。辺りには転校生目当てのギャラリーが沢山いる。自分で言うのも何だが、私も御堂さんと同じで、どちらかと言うとこういうのは苦手だ。だから顔を見て違うようなら、すぐ戻ろう。

「あ、あの人じゃない?」

七海の指した場所を見ると、そこには高校生には似つかわしくない風貌の男が座っていた。確かに「長身でイケメン」だが、髪は茶髪で机に足を乗せており、あれじゃ誰がどう見ても典型的な不良だ。周りの生徒は一部を除き引いている。そして一目見て確信した。あれは間違いなく、

「結城・・・真樹くん?」

思わず声に出していた。

その声が届いたのか、彼は私の方に振り向いた。足は依然として机の上に乗っている。私はハッとして口を両手で抑えた。

周りの視線が私と彼に注がれる中、暫く私を見ていた彼はその視線を逸らし言った。

「誰、お前?」

その再会は、最悪だった。
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