鬼系上司は甘えたがり。
 
明けて新年。

正月休み前の最後の出勤を終えたその足で夜行バスに乗って実家に帰省した私は、一週間弱の休みをほぼコタツの中と自室のベッドの上で過ごし、ややぷっくりしたという自覚のもと、新年初出勤の日を迎えていた。


最後まで『初詣に行ったり旅行に行ったり、もっとなんかあるだろ!』と食い下がっていた主任は、12月28日の朝、大きなキャリーケースをゴロゴロ引きながら出社した私を見て、こりゃダメだと流石に諦めもついたようで。

絵に描いたような渋々といった表情で私を夜行バスが発着するターミナルまで送ったあと、一人で部屋にいても仕方がないので、次の日の朝に実家に帰省するため車を走らせたらしい。


そうして、可哀相なことをしたかな……とちょっぴり後悔しながら迎えた新年、1月1日。

午前0時にはキッチリとあけおめラインを交わし、翌日の2日--私の25歳の誕生日。

特に話はしていなかったので、私でさえ自分の誕生日をすっかり忘れていたのだけれど、午前0時きっかり、また主任からラインが届いた。

たった一文の『おめでとう』は、果たして昨日も交わした新年の挨拶なのか、それとも私を祝ってくれているのか……ただ一つ分かることは、正月休みなんていう一年にそう何度もない大型連休の絶好の機会に、自分より実家を優先した私への不満がだだ漏れている、ということ。
 
< 153 / 257 >

この作品をシェア

pagetop