1300年の恋
だから、いつも池の側には近づかず外側の道をぐるりと歩いて回っていた。


猿沢池を通りすぎるとすぐ三条通りに入る。


西へ下ると、左側にお茶屋さんが見えた。


「おはようございます」


暖簾をくぐって声をかけると、目の前に大きな壁がそそり立っていた。


「痛っ」


気づくのが遅れた私は、その壁に激突して。


「大丈夫か?」


聞き慣れない男の人の声に、ぶつけた鼻を押さえながらそっと顔を上げた。


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