【ショート・ショート】コーヒー
『インスタント』
『インスタント』

 彼女との待ち合わせ場所は、いつも同じ喫茶店。そこでなろ待つのも苦ではないから。

 彼女はいつも、遅れてくる。
 なぜだか分からないがいつも遅れてくるのだ。ここのところそれが長くなり、俺が一人ボックス席に居る時間も長くなっていた。だが、待つのは彼女だけではなかった。コーヒーもだ。
 喫茶店の主人は本当にコーヒーが好きなのか、客が注文してから豆をひく。当たり前のことかもしれないが、その為にいつも時間がかかるのだ。だが俺は、それを待っている時間も好きだった。気持ちがこもっている気がして。
『今日は何にしますか?』
 店に入るとすぐに彼女にメールで注文を聞く。いつ頃からか、メールで注文を聞き、それが運ばれる頃に、彼女がタイミング良く現れるようになったのだ。彼女がいれているのではないかと、思うようなタイミングで。 そうだ、今日は彼女と同じものにしよう。
 なんとなく、今まで同じものにしていなかった。気恥ずかしかったからか、なんなのか。つきあい始めの頃、聞いてしまったからかもしれない。彼女の好みを……。
「私はインスタントのが好きかも」
 コーヒーを待つ間、なんてはなしに聞いた好み。二人の共通点がコーヒー
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