アイドル君と私


望の声も虚しく、咲は走って会場を出て行ってしまう。


コンサート会場を出た所で、雨が降ってきていることに気づく。


咲は空を少し見上げて、ペンライトをカバンにしまい、駅に向かって歩きだした。


「………。」


ポツポツとしていた雨が、少しずつ雨足が強くなっていく。


「……考えなしだ、私…」


前髪から雨の雫が頬に落ちてくる。


なんで…笑えたの?


なんで…名前呼べたの?


なんで……2人でいられたの?



なんで…。



気づくと、頬を伝うものが、それが雨なのか…涙なのか分からなくなっていた。


やっぱり


彼は遠い存在の人だよ…。


私……これ以上関わっちゃいけない。



これ以上。


好きになっちゃいけないっ……。



雨の中…、濡れたまま咲は歩いて行った。


そして、


時刻は0:00を回り、
1月1日


咲は一人で新年を迎えた…。




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