アイドル君と私


「でもさ、店の男の人には女性社員全員が出しあってチョコ渡すんだってね?」


「あ―…うん、お店はね」


「職場だから仕方ないよね~?」


「まぁーね…?」


「あ~でもホントは好きな人に渡した~いっ」


「あ―…」


それって……拓海?


「ねっ?咲っ」


「えっ?」


「だから、好きな人にっ」


「えっ…?いや、だから私はっ…」


「“好きな人なんていないしっ”!」


自分が口にしようとした事を、望に先に言われる咲。


「うっ…」


「はいはーい、そう言うと思った!」


「あのねぇ―?」


「あっ…ヤバイ、私もう行かないとっ」


そう言うと、望は立ち上がった。


「え~?ちょっと…」


「じゃあ~ね~」


ドアを閉め、望は先に出て行った。



< 136 / 545 >

この作品をシェア

pagetop