アイドル君と私


そう思った咲だったが、頭を左右に振り、もう一度作業に戻る。


「はぁ―…仕事仕事っ!」


と、そこへ。


「こんばんはっ」


声をかけられ、顔を上げた咲だけど、
誰の声かは分かっていた。


「…廉くん…」


「こんばんはっ」


廉はいつもの様に、ニット帽にだてメガネをかけて少し頭を下げた。


「…あっ…」


少しドキンッ…と胸が鳴る。


「今…雑誌持って来ますね?」


咲が注文棚から雑誌を持ってくると、 廉に渡した。


「ありがとう…」


「じゃあ、お会計お願いします」


「…うん」


そして、会計を済ますと、廉が少し小声で話しだした。


「咲ちゃん、昨日はゴメンね…?」


「えっ?あっ……ううん?」


「渡したい物があるって言ってたから…気になって…」


「あっ…えっと、お礼がしたかったの…」


「えっ?お礼?」


「うん、コンサートのお礼…」


「えっ!?いいよ―あれは、俺がお礼したくて誘った事がコンサートだったんだからっ」



< 162 / 545 >

この作品をシェア

pagetop