アイドル君と私


「いろいろ考えてたら…なんか、勝手に涙が…ね?」


困った顔で笑う咲。


そんな咲を見つめる廉。


「バカ…だよね?私…」


「ううんっ…」


廉はそう言って、咲の手を握る。


その温もりに、咲の想いが溢れ出す。


咲の瞳は、再び潤んできて…。


「……ダメなのっ」


「…えっ?」


廉が咲を見ると、咲は片手で顔を覆いながら、
大粒の涙を流していた。


「……あなたしか…見えないっ…」


「………っ!」


咲の言葉に、廉は咲を強く抱き締める。


「……俺もっ…」


廉の背中に、咲はゆっくり手を回す。


廉の腕の中で…咲は少しの間、泣き続けた…。


ーー


どうして、東京(ここ)は、
こんなに沢山の人がいるのに…


私は…あなたじゃなきゃダメなんだろう…?


ーー


少しして、咲が廉の腕から離れる。


「…っく、ごめんね?廉くん、今日仕事早かったの?」


「…うん」


「そっか…?でも、明日も仕事だよね?
もう…帰らないとっ…」


そう言って、咲が立ち上がる。


と、同時に咲の腕を掴む廉。


「…えっ?」


すると、廉は真剣な目で言ってきた。



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