オフィス・ラブ #3
「この足で、お前んちに行こうと思ってたんだ」
手間がはぶけた、と言う。
それを聞いた私が、また泣きだしたことを感じとったのか、新庄さんが、あきれたように笑った気配がした。
改めて、強く抱きしめてくれる。
それから、急に身体を離されて、顎に添えられた手で、上を向かされた。
泣きに泣いた後で、ひどいことになっているだろうから、思わず顔をそむけると。
かなり強引に、また上向けられる。
柔らかい微笑みと、目が合った。
「寂しかった?」
そんな言葉じゃ、表せないよ、バカ。
そういう思いをこめてにらむと。
いかにもおかしそうに笑って、唇に、弾むような、一瞬のキスをくれた。
もう一度、同じようなキス。
また。
もう一回。
陽気にくり返されるそれを、私は目を瞬きながら受けた。
いったい何がそんなに楽しいんだ。
「言えって言ったろ」
降りやまないキスの合間に、明るい声がする。
だって。
どうしたらよかったっていうの。
涙がこぼれる。
新庄さんはそれに気づくと、一度私の顔をじっと見て。
濡れた頬を、指で雑にぬぐって。
また、勢いよく私を抱きしめた。