オフィス・ラブ #3
「新庄さんの抱負は、もっといろいろ私に話す、でしょう」
助け舟のつもりもあってそう言うと、新庄さんが目を見開いた。
「いろいろって、なんだ」
「出向の事情とか」
「話したろ」
「聞いてません」
食いさがると、じろりと見られる。
「じゃあお前は、訊きたいことはさっさと訊く、だな」
なんだそれ。
まるで、私がうじうじしてるみたいじゃないか。
してたけど。
「言ってもらえてたら、訊けずに悩むことも、なかったんです」
「訊かれてたら、俺はすぐに答えた」
にらみあう。
これじゃ堂々巡りだ。
憮然としていると、新庄さんがふと、面白がるような顔つきになった。
「ルールに追加だな」
「…『なんでも話して』?」
「『訊きたいことは、我慢しない』」
新庄さんが、やけに真面目ぶってうなずくのがおかしくて、つい吹き出した。
「新庄さんのほうが、大変ですよ、守るの」
「そうなるか…」
言うべきことを言っていない自覚がないんだから、はっきり言って、直しようがない。
新庄さんは、まあ頑張る、と謙虚に言って、枕元の煙草に手を伸ばした。
一本取り出して、くわえようとしたところを、横から取りあげる。
「続きが先です」
「続き?」
ぽかんと私を見る顔に、キスをする。
大好き、という想いをこめて、唇を合わせる。
清潔な、短い黒髪に指を通して、ぎゅっと頭を抱いた。