イジワルな君と私との恋愛事情

結side2

「おい、結」

雪間くんが、私を呼んだ。

私は、『またか』と思いながら、

「何よ。」

面倒臭そうに、嫌な顔をしながら、返事をした。

すると、雪間くんは、なぜか、私の隣の席へきて、座ると、私をジッと見つめてきた。

(ん?何だろう?人の顔を見つめて……。)

不思議に思っている私に、雪間くんは、こう言い放った。

「結、ちょっと来いよ。」


授業が始まる前に私は、雪間くんに会議室に連れて来られていた。

(今度は何をするつもりなんだろう?)

私が、身構えて警戒していた時だった。

雪間くんが突然、ツカツカッと私のほうへ来たかと思うと、いきなり抱きしめてきた。

(ええっ!?なっ、何!?私…雪間くんに抱きしめられている……?…どっ、どうしよう……?)

私は、びっくりして、一瞬、頭の中が真っ白になった。

ドキンッドキンッドキンッドキンッ

胸の鼓動が早くなり、高鳴っていく。

抱きしめられている相手は雪間くんなのに……。

私は、しばらくの間、雪間くんに抱きしめられていた。

だが、ハッと我に返る。

このまま、雪間くんのされるがままになってたら、ダメだ。

「…ゆ…雪間くん、離して……。」

私は、そう言うと、身をよじって、雪間くんの中から逃れようとするが、雪間くんは、それを許してくれない。

すると、雪間くんは、私から身体を少し離すと、いきなりキスをしてきた。

私は、雪間くんに抱きしめられながら、そのまま二人はキスをしていた。

「!?」

私は驚きのあまり、目を見開き、雪間くんのキスを受け入れてしまっていた。

だが、その時、ふと高ちゃんの顔が頭をよぎった。

ドンッ!!

そして、気がつくと、雪間くんを、思いっきり突き飛ばしていた。

雪間くんは、少しよろめいただけで、すぐに体勢を元に戻した。

「…どうして……?…ど…どうして……、こんなことするの……?そんなに私をイジメて楽しいの?」

私は、唇を噛み締めて、ポロポロと泣きながら、そう言った。

雪間くんは、一瞬、辛そうな、切なそうな、そんな顔をした。

(えっ!?)

私も、雪間くんのその顔には驚いたが、だが、すぐにいつもの雪間くんの顔に戻った。

私は、

「…雪間くんなんて、やっぱり『大嫌い』!!」

そう言うと、泣きながら、会議室を飛び出した。

だけど、会議室から走ってる間も、一瞬だけ見せた雪間くんの辛そうな、切なそうな、あの顔を思い出して、忘れることができなかった。

そして、私は立ち止まり、涙を拭うと、

(私…、『好きでもない人』と、しかも、『大嫌いな人』とファーストキスしちゃったんだ……。)

私の唇に残る、雪間くんの唇の感触。

そう思うと、一旦は泣き止んだ涙が、また自然と溢れ出てきていた。




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