浮気者上司!?に溺愛されてます
「……ああ、そっか。政略結婚。だから紫乃さんは……」


恭介に愛されてないなんて思ったのかな。
思わず呟いた独り言に、恭介が冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、ボトルのまんま口を付けた。
そして、そうそう、と頷く。


「普通、そんなのお互いに嫌だろ。明治・大正時代じゃあるまいし、一般企業の若者が何を好き好んでそんな形で結婚なんてさ」


ゴクゴクと音を立てる仰け反らせた喉に見惚れながら、そんな自分に気づいて目を伏せた。


「……恭介は、政略結婚、嫌だったんだ」

「は? 当たり前だろ。そもそもなんで俺が政略されなきゃいけない。上司に媚びなきゃいけない理由が、俺にはない」

「……それを条件に、課長昇格、とか?」

「そんなもん、わざわざ媚びなくても実力だけあれば十分だよ」


緩いくせに強気で、しかも本当にその通りの恭介の言い分に、私はほんの少し苦笑した。
そうだよね。
課長に昇格して、中間管理職になった今でも、恭介のそういう姿勢は変わらない。


「でも……紫乃さんの方は、恭介のこと本当に好きになっちゃったってことだよね……」

「……あっちは専務の紹介だったし、ガンガン接近して来るのも、断られたら沽券に関わるってプライドかと思ってたけど」

「そんなっ……」

「ああ、わかってる。紫乃の嫉妬は正直言って異常だ。そのくらい、俺のこと思ってくれてるのはちゃんとわかってる。だから俺も、自分なりに紫乃に誠意持って向き合ったつもりだった」
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