麗雪神話~理の鍵人~
不意に、涙するセレイアの頬に、ぱしんと軽い衝撃がおとずれた。

痛みは大してなかった。

だが、ディセルに頬を張られたのだと気付いて、呆然とした。

ぼんやりと隣を見上げると、ディセルが真剣な面持ちでセレイアを見つめていた。

その瞳には、セレイアと同じ、悲しみが宿っている。

けれど同時に、揺るぎない光のようなものを、感じた。

「しっかりして、セレイア!
ポックの死を、無駄にする気!?
本当にポックを想うなら、今は立って。先へ進むんだ!」

「…………ディセル」

ディセルの言葉が、やっと胸に染み入ってくる。

(そうだわ…ポックは私たちのために、命を賭けてくれた。
だから私たちは、彼の願いを、なんとしてもかなえてあげなきゃ)

セレイアはよろけながらも、立ち上がった。

「ありがとうディセル。
もう、大丈夫……行きましょう」

ぎゅっと、ディセルがセレイアの手を握ってくれた。
< 145 / 159 >

この作品をシェア

pagetop