麗雪神話~理の鍵人~
「だ~いじょうぶ。おいら、応援してやるから。
スノーティアスには、そういった浮いた話が今までまったくなかったからなあ。セレイアみたいな優しいやつと恋人同士になって、幸せになってくれたら、言うことは無い。おいらはスノーティアスに、誰よりも幸せになってほしいんだから」

「恋人同士………」

そんな単語で、どこか浮ついた気分になっている自分が、セレイアは信じられなかった。

その時、コンコン、と部屋の扉がノックされた。

「セレイア? 入ってもいいかな」

その声は、噂をすればのディセルだった。

「は、はいぃ!」

思わず変な声が出てしまった。

ディセルが扉を開け、その姿を現す。

さらりと揺れる、銀の髪。

長い銀の睫毛に彩られた、透き通る銀の瞳。

たとえようもなく整ったその美貌は、この氷の神殿の中で、何よりも輝きを放っていた。

美しい……。

人間界にいる時よりも、けた外れにその美しさが増している。

セレイアの顔に熱が集まって来てしまう。

「ディセル! 私、ちょっと外を散歩してくる!」

妙に意識した手前、顔を合わせるのが恥ずかしくて、セレイアは思わず逃げ出してしまった。

「あっ、おい、セレイア!」

ポックの制止の声にも、セレイアは気づかない。
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