麗雪神話~理の鍵人~
(大丈夫かなっ!?)

他人の心配をしている暇はどうやらないようだ。

危うく一人の剣がセレイアの腕をかすめそうになったところを、ディセルの剣がそれを弾いてくれた。

「セレイア! 今は目の前のことに集中して!」

「ごめんディセル!」

セレイアが隙なく槍を構えなおした時だった。

「おやおや、こんなところまで来て、邪魔しないでくれる?」

聞き知った声が空から降ってきた。

わずかに高い、少年の声。

この声は……!

「ヴェイン!!」

叫んだのは、セレイアだったか、ディセルだったか。

同時に見上げた二人の視界に、霧からつくられた槍を手にしてふわりと上空に浮いた、ヴェインの姿が映った。

半顔には鈍く光る仮面。口元はこんな状況にもかかわらず、余裕たっぷりに微笑んでいる。何を考えているのかわかりにくい笑顔だ。

翻る黒い外套。相変わらず、どういった力で空を飛んでいるのかは謎だ。
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