麗雪神話~理の鍵人~
ヴェインがそのまま空を飛んで橋の向こうへ向かうのを見て、セレイアたちは焦った。

ここで奴を逃せば、のちのちろくなことにならないのは明白だ。

けれど湧き出た霧を、吸い込みすぎる前になんとかしなければならないのもまた明白な事実だった。

「くっ………待てヴェイン!!」

ディセルは諦めきれず、ヴェインをなんとかして追おうとして、一歩踏み出したようだ。

けれどあたりを漂う霧は尋常でなく濃い。

視界がふさがれている。

隣に立つディセルの姿さえ、はっきりと見えないほどだ。

「ディセル! 今は霧をなんとかしなきゃ!」

「ああ、くそっ…霧よ、カタチとなれ!」

ディセルの力で、たちまち霧が凝縮し、あちこちに霧虫が生まれた。

その数、十数体。

事態を読めぬレコンダムの兵たちも、突然の霧や霧虫の出現に、浮き足立っている。

ディセルはその隙をついて、すばやく彼らの足を凍らせ動きを止めた。

「セレイア! ボリスさん!
俺は兵たちを止めるから、霧虫退治を頼む!」

「ええ!」

「わかった!」

セレイアとボリスが、得物を構えて霧虫たちに狙いを定める。
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