麗雪神話~理の鍵人~
ボリスが先に登り、次にシルフェがロープをつかんで崖を登り始める。

「あっ」と、途中シルフェが悲鳴を上げて足を踏み外した。

自然、下にいたサラマスが落ちてきたシルフェの体を受け止める形になる。

サラマスの腕の中に転がり込んできたシルフェの体は、華奢だった。

そのことをサラマスが意識したのは、初めてだったかもしれない。

「おい、気をつけろ」

サラマスが注意すると、シルフェはぽっと頬を染めた。

「ええ……」

今度はボリスが面白くない気分を味わう番だった。

崖登りが終わった後は、比較的平たんな道が続いた。

あっというまに日が暮れた。

昼夜がないはずの天上界にありながら、ここでは人間界のように日が沈み、夜が訪れるようなのだ。そういえばセレイアは意識していなかったが、理の領域に入ってから、空が人間界そっくりの普通の空に変わっていた。

当たり前のように月が昇り、星々が輝く空。

「今日はこれ以上進むのは無理だな。敵さんたちも人間だから、夜通しは歩かないだろ。よっし、野営にするぞ」

ポックの指揮で、一行は休むこととなった。
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