イケメン王子先輩と私。
待つこと3分後。おぼんを持ってスーツを着た男の人が近づいてきた。だ、誰……?
「お待たせしました、雫お嬢様。本店特製ケーキです」
「……あっ、もしかして霰!?」
「そうですけど……何か?」
そういって霰はニコリと笑った。さっきは顔しか見えなかったから、わからなかった……。
「な、何でもないです、いただきまーす……」
あ、そういえばさっきの子達はどこにいったんだろう……。
「……あ、お嬢様。口元にクリームが……」
「え? ――ひゃっ」
すると、霰は私の口の近くについていたクリームを指でとって食べた。び、びっくりしたー……。それに、その後霰がニコッと笑ったから余計にドキドキした……。
「……あぁ、安心してください、雫お嬢様にしかこのサービスは提供しておりませんので。“お嬢様だけ”ですよ」
「!! 霰っ……」
私の隣に相原先輩がいて見てるのに……!数分後、ケーキを食べ終えた私は店を出た。
「あ、雫お嬢様! 文化祭が終了しましたら校門で待っていてください!」
「あ、うん。わかりました……」
そういって私は他の店をまわった。あれ、あの人って……。やっぱり。でも、どうしてここに?まさかアイツまだ……。そう思っていると、アイツが私に気づいた。
「……あれ、お前……あっ、おい! 待てよ!!」
「やだ……、こないで……!!」
私はアイツに捕まらないように、ひたすら走って逃げ続けた。
「ハァッ……ハァッ…………」
よかった……なんとかアイツに捕まらないですんだ。そう思って体育館裏からメイドカフェに戻ろうとして曲がり角を曲がった時。
「――みーつーけた☆」
「!!」
急いでアイツから逃げようとしたが、手首を掴まれた。
「なぁ、なんで逃げんのー? ……お前に話があってここにきたのに」
「……なによ」
「雫。俺達、もう1回だけ――」
「またその話? ……何度言われても気持ちは変わらないよ。それに私、彼氏いるし。学校1のイケメンで優しいの」
「そっか。それじゃあまたな。今度またくるよ」
「二度とこないで!!」
「やーだね」
そういってアイツは帰っていった。すると、ちょうど校門の近くに霰がいた。
「霰!! 帰ろう!」
「おぅ! いつもより元気だな」
「そうかな? ……執事喫茶お疲れ様」
「あぁ、雫もな。……そういえばさ、さっき話してた男って、誰?」
「……見てたんだ」
「偶然だけどな」
「アイツは私の元カレ。浮気されて見捨てられたの。なのにアイツは……、何回も何回も『もう一度付き合おう』とかいってきて……耐えられなくなってここの高校に入学したの。だけどなんかアイツはきてるし……」
あぁもう、喋り始めると止まらない……。
「雫、大変だったんだな……」
「ん……。じゃ、またね霰」
「あぁ、またな」
そういって私は霰と別れて家に帰った。