一夜くんとのアヤマチ。
「…く～っ！」

保健室に戻り、誰もいないのを確認すると、私は思いっきり背伸びをした。

我ながら、よくやった。私って、割と授業うまいんじゃん。鶴花さんの評価だけだけど、あの子はしっかりしてそうだから、多分大丈夫。

「ぷは～っ…」

伸ばしていた腕を、ストンと脱力する。久しぶりに、リラックスできた。

「先生」

聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。振り返ると、すぐ近くに鵜児くんがいた。

「わわっ、鵜児くん…。急に来たらびっくりするじゃん…」
「ゴメンね、驚かせちゃって」
「で…どしたの？」
「えっと…とりあえず、中入ってもいい？」

鵜児くんを保健室に招き入れ、ドアを閉める。

「さっきの授業」

二人きりになると、鵜児くんは最初にこの言葉を口にした。

「え？」
「さっきの授業、よかったよ」
「あ…うん、ありがとう…」

本題は、きっとそうじゃない。そう思ってるから、返事もどこか素っ気ないものになってしまった。

「僕も見習わないと」
「えっ…？」

次に鵜児くんの口から出た言葉は、私にとってはいささか意外なものだった。鵜児くんは大学時代から変わらないタレ目を悲しそうに薄く開けていた。
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