一夜くんとのアヤマチ。
「次の方、どうぞ」

烏間高校は幸いにも駅の近くにあるため、歩いて行ける距離に結構大きめの病院がある。私が一夜くんに運ばれてやって来たのは、そこだった。

内科の受付をして、十五分。

「どうされましたか?」

さすがにもう吐き気は引いていたけれど、だからって大丈夫というわけじゃない。できるだけ詳しく、説明した。

「…そうですか…」

私の話を聞き終わった先生は、聴診器を右手に取った。

「とりあえず、診てみますね。急な吐き気ということですから、ただの疲労とは考えづらいですし…」

一夜くんは、今どんなことを考えているんだろう? 聴診器の冷たさを体の要所要所で感じながら、ふとそんなことを思った。待合室で待ってくれている一夜くんに、何でもなかったと言って、安心させてあげたい。

「…」

聴診器が、お腹のあたりで止まった。

「…先生?」
「…鷹夏さん、一つ下の階へ行っていただいてもいいですか?」
「下?」

内科のある三階へ上がる時にチラっと見た、病院の案内図を思い出す。二階にあるのは、泌尿器科、呼吸器科、産婦人科、精神科…。

「産婦人科です」

聴診器を首にかけた先生は、対して驚いた様子もなくそう言った。

…ある予想が、頭をよぎった。
< 69 / 120 >

この作品をシェア

pagetop