一夜くんとのアヤマチ。
「…いつできたの?」

先輩の最初のリアクションは、それだった。

「この前、夜中にもめたことあっただろ? あの後」
「あの後か…」

先輩がため息をつく。そして、一夜くんを問いただした。

「自分がやったことが、どんなことか分かってる?」

誰の目にも、一夜くんは責められているようにしか見えなかった。

…一夜くんは悪くない。あれは、私が寂しかったから。そう思うと、今まであれほど舌に乗らなかった言葉が、舌をも通り越して大気に飛び出した。

「やめて下さい、先輩!」

部屋全体が、私の言葉に共鳴した。

「…日向ちゃん…?」
「一夜くんは悪くないです…だから、責めるのはやめてあげて下さい…」
「日向…」
「…ゴメンね、一夜くん。私のせいで巻き込んじゃって…」

あの時のことを、先輩に全部話した。

「…夜中に外で言い争う声で、目が覚めたんです。窓を開けてみたら、一夜くんと、先輩と、雪月ちゃんと…あとは誰だか分からないんですけど、もう一人誰かがいて…。しばらくしたら、一夜くんが尋ねてきたんです」

話しながら、あの時の情景が目の前に蘇るような感覚に陥った。

「何を話してたのかは分からなかったんですけど、とにかく大変なことが起きてるってことは雰囲気で分かって…。それに、あの頃から私、一夜くんのことが好きだったんです。生徒としてじゃなくて、一人の男の人として…」

事実上の告白をした時、言葉が一瞬詰まった。
< 74 / 120 >

この作品をシェア

pagetop