一夜くんとのアヤマチ。
私の勝手な想像だけど、先輩は一夜くんから私を遠ざけてくれているような気がした。…だけど欲を言えば、今は一人でいたかった。

「…大丈夫です。大丈夫ですから…」

だから、先輩の真意も分からないままに、私は逃げるようにその場を立ち去った。そして気がつくと、私はとある公園の前に来ていた。

「…」

そこは、私が子供の頃、よく遊んだ公園だった。友達とも遊んだけど、お父さんと遊んでいた頃の思い出の方が、今だからかもしれないが強く記憶に残っていた。

自転車の補助輪を取る時も、この公園で練習していた。

「大丈夫か、日向?」
「へーきへーき! もうのれるもん!」

お父さんの心配をよそに、一人で自転車をこぎ始めたあの頃の私。でも私は天才というわけではないので、すぐに転倒してしまった。

「うえ~ん…いたいよ~…」

転んでちょっと血が出ただけで泣くなんてわがままだと思うのだが、それが子供というもの。私もその例外ではなく、こぎ始めた地点から二メートルも離れていない所で、声を上げて泣いた。

「日向!? 大丈夫か!?」

お父さんは子供の性分を分かっていたのか、それとも分かっていなかったのかは知らないけれど、すぐに私の元へ駆け寄り、少しすりむいただけの膝に、丁寧にばんそうこうを貼ってくれた。

「…」

そのお父さんが…私の知っているお父さんじゃなくなっていた。…皆そういうものなのかな? だったら、目の前で楽しそうに遊んでいる親子も、いつかは崩れてしまう…。

「…お父さんっ…!」

失って初めて、家族のありがたみに気づいた。…もしかしたら、私しかしていないそんな経験が、一夜くんや先輩に共感してもらえるわけがない…そう思って、一人になりたかったのかもしれない。
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