シェリーに捧ぐ
シェリーに捧ぐ

「乗せてってくれませんか」

それは冬の寒さが一段と身に堪える日の事。
黒の大きな瞳を揺らして一身にこちらを見つめて、それだけを口にして黙りこむ。それはまるでこちらの出方を伺うようにして。

「由梨(ゆり)ちゃん、どうしたのさ急に。…まあ別にいいけど」

普段決して我をというか、控え目で自我などを通さない彼女。この職場上では一番の年下だししかも入社したばかりということを考慮にいれてそれは妥当だけれども、常にこちらの様子を窺いながら自分がどういった態度であるべきかを時間をかけて思案して口を開く。なので思いもよらない急な申し入れに、俺は辿々しく返答をする。
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